今も。これからも。ずっと、きみだけが好き。
 食欲が落ちた原因。
 これだったんだね。

 あの選手が出場するってことが、こんなに気持ちの負担になってたなって思いもしなかった。
 過去は過去のこと、割り切ってるんだとばかり思っていた。

 違ったんだ。

 あの日対戦した試合が忘れられない記憶となって、残っているんだろう。


『怖い』

 初めて聞く言葉。

 陽菜に似つかわしくない言葉。

 自分で自分を追いつめて、がんじがらめにして、食欲まで落として、それでも、誰にも言えなくて。
 それが陽菜のプライドかもしれないけれど。



「ちっぽけなプライド。いつまで守ってんの。いい加減、捨てちゃったら?」

 陽菜の肩がピクッて動いた。


「まだ何にも始まってないのに、対戦するかも分からないのに、怖がっててどうするの?」



 生暖かく、傷を舐めてあげることの方が容易いことかもしれないけど。

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