今も。これからも。ずっと、きみだけが好き。
 航太が去ってからしばらくして俺も店を出た。

 今日はいつもより寒い気がする。

 夜風が頬を殴るように吹き抜けていく。

 寒い。
 寒さが心に染みる。

 トボトボと歩いていく帰り道。

 気がつけば陽菜のマンションの前。

 あそこら辺なのかな。

 見慣れてしまった建物を仰ぎ見た。


『陽菜に近づくな』

 航太の言葉が頭の中をリピートして、昨日のことが思い出されて後悔する。

 陽菜の声を聞きたい。
 笑顔を見たい。

 出来るなら陽菜に会いに行きたい。

 ごめんって一言謝りたい。



 俺はしばらくの間、佇んだままマンションを見つめていた。

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