あなたのためのリップグロス


 キョロキョロと彼が来るであろう方を向くと、あたしの視線は一点に吸い寄せられた。


 自信を感じさせる歩き方と、歩く度に揺れる焦げ茶色の髪。


 真っ直ぐ見つめてくる茶色の瞳。


 そう、あたしの彼氏である佐野拓。


 綺麗系な人じゃないけど、力強くてなにからも守ってくれそうな人。


 そういう男性が好きな女性は、ほっとかないタイプ。


 今も、肉食系女子な美人さんが拓に声をかけた。


 こういう現場を目にすると、途端にあたしのなけなしの自信は木っ端微塵になくなって、家に帰りたくなる。


 自分でも、なんで拓と付き合えているのか不思議でならない。


 そんな事を考えていると――。


「お待たせ」


 その声に、あたしは振り返ろうとした。

< 6 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop