遅咲きプリンセス。
「どうって、普通ですよ。ポーチにジャラジャラ入れてますし、取り出すときは、例えばアイラインだったとして、それが見つかるまでほかのものをかき分けて探す、って感じっス」
「やっぱりそうなるよね……」
「先輩は? どうなんスか?」
「それ、私に聞くかな」
「ははっ!」
有村君は、悪気なく笑った。
まったく……。
でも、不便だとは思っていても、結局はポーチの仕様に合わせて使わなければいけないのだから、私はともかく、それを使う人は、有村君のように思っている人も多いかもしれない。
ふむふむ、と頷く私だ。
というのも、今回、彼とすることになった仕事は諸見里さん関係のもので、私がモニタリングしているグロスを入れる化粧ポーチをデザインしてもらえないか、というものだった。
もちろん、グロス以外にも試作品はあり、他社の女性社員にも別のものをモニタリングしてもらっているそうで、諸見里さんもまた、商品の企画から販売に至るまでの作業を1人で手がける方なので、私たちが考えたポーチをそのまま商品化するわけではないという。
しかもポーチに関しては、他社との競争だ。
よりいいプレゼンをした会社と手を組み、少し手を加えて売り出すつもりだということで、なかなかシビアなのである。