遅咲きプリンセス。
 
すると課長は、先ほど諸見里さんが、ぺいっ!と投げ、会議室の壁に当たり、悲しげな音を立てて床に落ちた、私の手作りのみすぼらしいポーチを手に取りながら、そう言った。

課長どうした!? と、思わずギョッとして固まってしまうと、しかし課長は、こう続ける。


「今日はもう帰れ。3日間、まともに寝ていないんだろう、ゆっくり休むといい」

「いや、ですが……」

「うるさい。これは課長命令だ!」


そ、そんな……。

だってまだ、朝一ですよ!?

けれど、有無を言わせぬ迫力で課長命令を発令されてしまったので、私にはそれ以上の抵抗などは断じてできるはずもなく、プレゼンで使った資料を片付け、自分のデスクに置くと、おずおずと、本当におずおずといった感じで引き出しから鞄を取り出し、帰り支度をはじめた。


「あれ、もう帰るんだ?」

「うん……。せめて定時まではいたかったんだけど、課長命令でね。ごめん、お先ね」

「おー。お疲れー」


ほかの社員、とりわけ、女性社員からは全く気づかれる気配はなかったのだけれど、そこはやはり、隣のデスクだった。

菅野君と短い会話を交わし、本当に帰宅する。
 
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