君とひとつ屋根の下で
 


  暑い。



 今日はベストなんて着てしまったものだから、とても暑い。



 どこかで涼んで、アイスでも食べたいな。



 そう思いながらも、涼しくなることとは真逆のことを。



 信号が青に変わると、全力で走る。



 カンッ、カンッ、カンッ、と、古い金属製の階段が音を立てた。



 スクールバッグを開けて、鍵を出して鍵穴に差し込んだ。



 


 「ただいまーっ」






 誰もいない、冷たい“空間”に、自分の帰宅を知らせた。



 自室へ直行、慌てて制服を脱いで、私服に着替えると、財布のみが入った鞄を手に取り、机に置いた鍵を手に取った。






 「それじゃ、行ってきまーす」






 そしてまた、冷たい“空間”に、外出を知らせた。
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