きみは金色

背中に棒を通したように伸びていた姿勢が、今ではおびえる小動物のように、丸くなってしまっているから。



…そんな怖がらなくてもいいんじゃねーの?


とって食おうってわけじゃないんだし。



曲がった背中を目に映しながら、息をついた。



まあ、おれが音楽室から出ていってやれば済む話なのかもしれない。



でも、何でだろうな。わかんねーけど。


どこかで意地の悪い気持ちが生まれてたんだろうか。



おれは動かず、どっしりとイスに座ったまま、市ノ瀬を観察していた。



またしばらく、沈黙が続いた。



放課後になったばかりの、黄色い光に囲まれた音楽室は、とても不思議な空間だった。



少しずつ向きがずれて、ガタガタした印象を与える、30数個のイスと机。


そこには騒ぐような生徒も、投げ置かれた落書きつきの教科書なんかも、なくて。


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