きみは金色

歩いている最中、いきなり真子を引き寄せてキスをした。


温度に触れる直前に、ヒュッと息をのむ音。



「…っひ、人前では、だめって……」



くちびるが離れた瞬間に、真子がひっくり返った声を出す。



ピンクに上気した頬。

ものすごく泳いだ目。



その様子に、さっきの心臓が跳ねるドキッとは別の、ジワッとした感覚が、体の中に生まれた。



「…じゃあ、人いないとこ行く」

「…っ、あ、明るいうちはだめ…」

「明るいうちしか、会ってくんねーじゃん」

「………っ、」



目の前にある真子の顔が、どんどん真っ赤になっていく。


でも、逃げなかったから。だからもう1回だけ。


前髪をさらりと分けて、おでこにキスを落とした。




…キスをするとき。



真子は最近やっと、腰が引けないようになってきた。



逃げないように踏ん張って。


棒立ちになって、目を閉じて。


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