きみは金色
後ろから見えるのは、忙しそうに動いている市ノ瀬の手。
ノートの上に陣取って休憩ばかりしているおれの手とは違って、ずいぶん働きものだ。
文字までは見えない。
でも市ノ瀬はきっと、クセのない文字を書くんだろうなと思った。
…色白だとは思ってたけど、指まで白いんだよな。
黒板をまともに写すことなく、シャーペンを指先で遊ばせながら、そんなことを考える。
制服でおおわれている見えない部分って、もっと白いんだろうか。
もっと白いって、どんなのだろう。
白より白い色。透明に近い色。
…透明に近いって、なんだ?自分で考えて、わからなくなる。
重なる。
今、シャーペンを包み込んでいる指と、やわらかくピアノに触れていた指の像。
奏でる音は、やわらかかった。
あの指自体もやわらかいんだろうか、なんて思ってしまう。
それとも、肉があまりついていないから、かたいんだろうか。