きみは金色

後ろから見えるのは、忙しそうに動いている市ノ瀬の手。


ノートの上に陣取って休憩ばかりしているおれの手とは違って、ずいぶん働きものだ。


文字までは見えない。


でも市ノ瀬はきっと、クセのない文字を書くんだろうなと思った。



…色白だとは思ってたけど、指まで白いんだよな。



黒板をまともに写すことなく、シャーペンを指先で遊ばせながら、そんなことを考える。



制服でおおわれている見えない部分って、もっと白いんだろうか。


もっと白いって、どんなのだろう。


白より白い色。透明に近い色。



…透明に近いって、なんだ?自分で考えて、わからなくなる。



重なる。


今、シャーペンを包み込んでいる指と、やわらかくピアノに触れていた指の像。


奏でる音は、やわらかかった。


あの指自体もやわらかいんだろうか、なんて思ってしまう。


それとも、肉があまりついていないから、かたいんだろうか。


< 27 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop