きみは金色
走る。走る。走る。
校舎。外の景色。鮮やかなスピードで流れていく。
繋がった手の結び目が、ひどく熱い。
…ああ、これ。2年の時の、合唱コンクールん時みたいだ。
真子を連れて走りながら。息を切らしながら、そんなことを思った。
重なる光景。好きを伝える前の、あの秋の日のこと。
ピアノ演奏を終えたばかりの真子の手を引いて、体育館から強引に連れ出した。
あの時のおれ。今のおれ。
何が変わったかな。何が、変われたかな。
なあ、おれさ。
真子のことを好きになって知った気持ち、いっぱいあるんだ。
好きが生まれて、好きが育って、知っていく気持ちは、それからもずっと増えていった。
おれ、よかった。真子を好きになってよかった。
知らないままだったら、今のおれはいなかった。
真子がいたから、前を向こうと思えた。
真子も、きっと。初めて言葉を交わしたときよりもずっと、強くなってた。