久しぶりだね初対面
「これだけ近いと、登下校も昼ごはんも、ずっと一緒に出来るね」

嬉々として語る女だが、俺はそろそろ手繰り寄せる糸の向こう端が見えてきそうだった。

この女に、思い当たらない。

「なあ」

「ん?何?」

ニコニコしながら俺を見る女に、少し申し訳ないなと思いつつ。

「お前誰だっけ?俺どっかでお前と会ったか?」

「え…」

女は、ウインドウを開きすぎたパソコンのようにフリーズした。

「や…やだなぁ、冗談やめてよ…私だよ、双葉へきるだよぅ…」

…名前を聞いたところで、やはり思い出す事は出来ない。

それどころか本当にあった事があるのかどうかすら疑わしい。

…そんな疑いの眼差しで見つめているのに気づいたのかどうかは分からないが、その女…双葉は、少し怒った顔で俺を睨んだ。

「悪い冗談はやめてよね。私が昨日どれだけ必死に探したと思ってるのよ」

そんな事言われてもな…。



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