ライギョ
にしてもだ、


昨夜もなんだかんだで帰りそこねた実家に今日こそ帰るぞと思うのに…


「取り敢えず、シャワーする?」


「えっ…、」


「えっ、て…、汗掻いたしそれにお好み焼きの匂いがついてて竹脇くんちでも気になってたのよね。」


「ああ…そう、です、よね。うん、確かに。お好み焼き食べると付きます、匂いが。」


俺の節操のない勘違いが千晶さんに伝わっていない事を切に願う。


落ち着け、俺。


千晶さんとお泊りになったとは言え、ここのスイートルームには何部屋もあるじゃないか。


最早、同室とも思えない。


そう、思えない、思わない…ように努力する。


「バスルーム、確かもう一箇所あるのよね?じゃあ、それぞれシャワーした後にこのリビングで軽く予習しよ。」


「あっ、えっと、はい。よ、予習ですよね。了解です。」


そうだよ。


俺が今、一番にすべき事は、あの資料の中身を少しでも多く頭に叩き込むこと。


俺は情けない煩悩の数々も水に流すべくシャワールームへと向かった。



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