代償 2nd mean
総長、脱色。

家で。

─────。


暫く日が経った。
上城 上時───上寺 慶佑は、退院。
記憶を喪失したまま。
あのマンションに戻ってきた。
13階に。
掃除したから、取り合えず、住める。
冷蔵庫は空っぽだけどねー。

「慶佑」
本名で呼ぶ。
慣れないけど、このほうがいいのかも知れない。
何もかも忘れて。
自分の名前まで忘れている。
「………」
家の中を見回して、
「………ここ、どこだ?」
「慶佑の家だよ?」
「………」
記憶にないっぽい。
………ここまで忘れたのか。
「───」

………何か、徘徊しそうー。
なんてね。

「………文香」
何とか覚えて貰えた、私の名前。
………何で、そんな顔して名前呼ぶのよ。
前までのあんたは何処へ?
………仕方ないか。
「どうしたの?」
「………前まで、一緒に住んでいたのか?」
「うん」
「………そうか」

それも。
記憶にないか。
「何食べたい?」
「………」
まさか。

「………何って、何?」
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