代償 2nd mean

上時

「ケイスケ、は、知っていたんだろう。同じ俺だとは思えん」
「………」

感動も………何もない。
慶佑が、上時に戻って。
上時はガラスにうつった自分を見て。
「あーあ。抜糸されたか」
頬を擦る。
「笑えるな。久々に自分の顔見て。………こんな顔だったか?ボロクソな顔だった気がするんだが」
窶れて痩せた、あの顔。
暫く、あの酷い生活から離れていたから。
「………慶佑」
「俺は上時だ。ケイスケじゃない」
上時───上城 上時だ。
上寺 慶佑じゃなくて………。

「………また、減ったな。前橋組の奴等が」
「………」
「俺の記憶が正しければ、俺が前橋組に入って、17、18人めだ」
消えた人数。
キャーラと凜音さん。
「………名前、覚えてる?」
全員………、覚えてるよね?
「………族に入りたてに一人死んだ。名前は、そいつだけ覚えていない。あとは全員覚えてる」

青く澄んだ空が嘲笑ってる。
「………いつも、こうだった。誰かが消えた日の空は、澄んでいて、清々しい───青空が、見下ろしていた」
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