桃の花を溺れるほどに愛してる
「からかわないでくださいっ!それで、私に何か用ですか?」

「うん。ここじゃあちょっと騒がしいから、場所を変えようか」

「はぁ……」


 はやく済ませてほしいので、周りが騒がしくて全然いいから、ここで言ってほしかったんだけど……。

 相手は一応先輩だし、仮にもファンの多い学校の王子みたいな人だし、そんな口答えができるわけもなく、私は榊先輩の言葉に従った。

 っていうか、春人のせいでホントに眠い……。榊先輩の言う用とやら、はやく終わらせてもらえるとありがたいんですけど……。


「ここなら誰も来ないね」

「そーですね」


 榊先輩に連れられてやって来たのは、学校の屋上だった。

 まぁ、昼休みの時ならともかく、確かに今はここなら誰も来ないかな。


「本題の前に、はい、これ」

「?」


 榊先輩に手渡されたのは、ピンク色のかわいらしい模様の紙袋。

 なっ、なんぞ、これ……。

 私、榊先輩に憎まれることをした覚えもなければ、好かれることをした覚えもないんですが。


「最近、眠れないって風の噂で聞いてさ……。よく眠れるように。紅茶」

「そっ、それはどうも……」


 風の噂……?

 よく分からないけど、確かに私はだれかさんのせいで寝不足だし、ここはありがたくいただいておこうかな。
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