桃の花を溺れるほどに愛してる
「春人?!私よ!桃花!ねぇ、分かるっ?!」

「とうか、さん……。ぜんぶ、聴こえていました……。心配をかけて、申し訳……ございません……」


 ぜんぶ……って?


「まだ目覚めたばかりなんだから、そんなに喋っちゃダメよ!先生……先生を呼ばないと……」


 春人の手をベッドの上に戻し、先生を呼びに行こうとしたら、春人にギュッと手を掴まれた。


「え?」

「僕“も”、愛しています……桃花さん」


 そう言うと、春人は再び目をつむって眠りについたようだった。

 ちょっと待って。ぜんぶ聴こえていた……って、まさか!私が春人に向かって言っていた言葉ぜんぶ?!

 好きだとか責任とりなさいとか……ひぇー!マジですか!この上なく恥ずかしいんですがっ?!

 って、今はそんなことを考えている場合じゃなかった!はやく先生を呼びにいって、春人が目覚めたって報告をしに行かないとっ!


「先生!春人が!目覚めたんですけどまた眠りについて……!」

「ちゃんと分かっていますよ、神代さん」


 先生を呼びに部屋から出ようとしたら、逆に向こうからやってきた。

 かなり歳のいっている人だけれど、ベテランさんなのか……な?ん?胸のところのプレート、“天霧”って書いているっ?!

 もしかしなくても、ここの院長こと春人のお父さんっ?!
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