桃の花を溺れるほどに愛してる
「なっ、なによっ?!男なんだから、シャキッとしなさいっ!」

「いや……ですが、桃花さんの自宅で晩ご飯をいただけるなんて本当に恐縮で……。手土産も用意していないですし、どんな顔をしてお会いしたらよいのか……」

「もう!だからもっとシャキッとしなさいてばっ!手土産は……“碧の森”でケーキを持ち帰れば解決っしょ!」

「あっ、それはいいですね。……それにしても、どうして僕が桃花さんの自宅に伺うとおっしゃったんですか……?」

「それは……」


 言えない。

 春人ともっと一緒にいたかったから……なんて、口が裂けても言えない。


「桃花さん?」

「あー、もう!なんだっていいでしょっ?!春人ともっと一緒にいたかったからなんて死んでも言わないんだからっ!………………あっ」


 私の発言を聞いた春人は、ぽかんと口を開けた。

 しかし、すぐに微笑んだ春人は、私の手を引っ張って裏路地を後にし、再び“碧の森”へと向かっていく。

 私の両親への手土産を買いに行くつもりなんだろうけど、そんなこと、いちいちしなくてもいいのに……。

 晩ご飯を一緒にするための、せめてものお礼とかなのかなぁ?

 そんなことを考えていると、春人は私の両親への手土産を買った。
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