桃の花を溺れるほどに愛してる
「……僕も、実を言うと、桃花さんとまだ一緒にいたいです」


 春人の車に乗り込んだ私は、車の走行中、そんなことを春人から聞いた。

 照れのあまりに、何かを言い返してやろうかと思ったけど……やめた。

 この甘い雰囲気を壊したくはないし、なにより、春人が私と同じ気持ちでいることが嬉しくて……。

 ほわほわとした幸せなオーラだけが、車内を埋め尽くしていた。

 春人の嫉妬を目の当たりにしちゃったこととか、さっきのキスのこととか……それらはすべて、私の胸の中で大切に保管しておくことにした。

 ちょっと時間が経ったら、春人に言うのはいいかもしれないけれど、それまでは大切な思い出の1つとして保管しておこう。

 今はこの幸せな気持ちに浸っていたいし、なにより……。

 今、さっきのキスの話題を出しちゃったら、また赤面して事故とか起こしそうで怖いから……あはは。


「桃花さんの自宅で晩ご飯を一緒にするということは、もしかして……」

「ん?」

「桃花さんのお父様も……?」

「え?あっ、うん。いるだろうね。……でも、大丈夫だよ。お父さん、春人と酒を飲みたいって言っていたし、私達の交際について怒っているそぶりはなかったよ?」

「そう、ですか……。それならちょっと緊張が解れますかね……あはは」


 そう言って笑う春人だったけど、口元が引き攣っているように見えたことに関しては何も言わないことにした。

 春人、グッジョブ!
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