桃の花を溺れるほどに愛してる
 春人の返事をちゃんと聞かないまま、私はせかせかと部屋の中に入った。

 うっわー……。

 確かにオヤツの入っていた袋が机の上に乗っかっているし、ベッドの上にはウサギの下着が散乱している……。

 って、これは朝にどの下着を履こうか並べて悩んだからであって、普段からこんなみっともない生活をしているわけじゃないんだからね!

 私みたいなフツーの女子高生に彼氏なんて出来ない=部屋に招く必要もない=部屋を散らかしても大丈夫っていうわけじゃないんだからね!

 まっ、まぁ、そんなフツーの女子高生にも彼氏……と胸を張って言っていいのかは謎だが、そういう類の人も出来たわけですが。

 ホント、謎だわ。なんであんな美形のイケメンさんが、私のようなフツーの女子高生を選んだのか、が。

 まぁ、考えていても仕方がないことなのかもしれないけど……。

 ――っと、部屋を片付けないと。

 ベッドの上に散乱していたウサギの下着をタンスの中にしまい込み、机の上の空のオヤツの袋はゴミ箱に捨てた。

 他にも、見られたら困るようなものをちゃんと元の場所に戻して……っと。うん、これでいいかな。
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