赤の鎖
第一章 人魚姫

(一)


もう寂れてしまった、ひとけの無い公園に足を踏み入れる

誰も座っていない赤いブランコが、風に揺れていた


そのブランコにそっと腰をかける

けれど揺らしはしない


もしもこの公園に誰かが入ってきたら、気味悪がって逃げてしまうだろうから



桜島公園


何年も前からある、赤いブランコが特徴的な公園だ

人は滅多に来たりしないが、この地域の者なら誰だって存在ぐらいは知っているだろう


桜島という離島が、日本にはあるから、昔はよくややこしいと眉を寄せていた


何故「桜島」という名がついたのか、詳しくは知らない


だけど、きっとこの大きな桜が由来なんだろうな、と思う

促されるように、ブランコの脇に生えている大木を見上げた


今は黄色くなった葉が枝に付いているけれど

春になれば、淡い桃色の花弁が枝に芽生える


大きな大きな桜の木

この公園には、松や栗の木も育てられているが、その中のどれよりも背が高い


遠くから公園を眺めると、桜の木も目に入るほどだ

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