カリス姫の夏
控え室に入ると、華子さんは黙々と体調チェックを行った。一連の作業が終わった事を確認し、私は華子さんに質問した。声はかっすかすに乾いている。
「華子さん、一体なんだったんですか?
今の茶番は」
華子さんは眼鏡の奥の目を見開き、大げさに驚いてみせた。
「へー、子リス。
あんたもちょっとは成長したんだね。
茶番だって気づいてたのかい?」
「みえみえですよ。
でも、ちょっと面白かったですね。
お客さんがノリ良かったから。
まっ、ノリいいって語弊あるけど。
今の誰か撮影してなかったんですか?
インターネットの動画サイトに投稿したら、人気でるかもしれませんよ。
いや、ここまでやるなら、最後にフラッシュモブ的にみんなで踊りだして……」
私の動画オタクの血がさわぐ。不謹慎にもクスクスと笑いがこみ上げる私。そんな私の提案に、大川さんは穏やかな顔で乗ってくれた。
「カメラかー。
回してなかったろうなー。
そこまで頭まわんなかったね
失敗したなー」
大川さんは最後のチョンボを打ち消すかのように、はっはっはっと豪快に笑った。
外に、聞こえていなければいいが……