Doll‥ ~愛を知るとき
民家の間を通れば、アパートまでは近い。
けれど、帰りは国道を横切って海側へと向かった。
海岸へと続く石の階段を降り、ゴツゴツした岩場を よろけながら歩いて、好きじゃない波の音を ひとり聴いていた。
海鳥が鳴いている。
その声は、切ない。
岩に当たって弾ける波に、樹が与えてくれるエクスタシーを連想する。
鳶(トンビ)の群れが岩場に降りて来た。
真っ黒な鳶の固まりが怖くて、あたしは階段に向かった。
早く帰らなきゃ‥
樹にバレると叱られる‥
ゆっくりと階段を上がり、横断歩道を渡る。
樹と一緒ならオブってくれる登り坂を歩いて、あたしはアパートに帰った。