Doll‥ ~愛を知るとき
四月。
桜の花が美しく咲き乱れる頃、春の陽気に誘われるように お洒落したくなった。
その日、あたしはルージュだけを引いて、愛翔をベビーカーに乗せ買い物に出掛けた。
口紅をつけただけ。
なのに、とても明るい気持ちになった。
わりとハッキリした目鼻立ちだから、唇に色が付いただけでメイクしているように見える。
嬉しくて、何度も鏡を覗いていた。
口紅だけなら、浩也だって許してくれる‥。
勝手に、そう思い込んでいた。