Doll‥ ~愛を知るとき
毎日、仕事の行き帰りは、以前住んでいたアパートの前を通る。
公園には、満開の桜の花が咲いている。
一緒に見たわけでもないのに、樹を思い出していた。
四月は雨が多い。
しとしと降る雨に、花びらが散っている。
もし、浩也と幸せな毎日を過ごしていたら‥
こんなに切なくなることは、無かったのかもしれない‥
だけど‥
─ 樹に会いたい‥
叶わない想いは涙になって、フロントガラスの向こうを滲ませていた。