Doll‥ ~愛を知るとき
少しの時間を想い出話に費やして、二人と別れた。
愛翔を抱いてマンションへと歩きながら、樹のことを思い出していた。
─ 愛波は何も考えなくていい ─
あの夜、彼の腕の中で人形になれたら‥
何も考えない人形になっていたら‥
全く違う未来が待っていたかもしれないのに‥
「まんまー!」
お腹を空かせた愛翔の声で、現実へと引き戻される。
マンションのエントランスを通り、エレベーターのボタンを押した。
鎖に繋がれたままの犬のように飼い殺しになる以外、あたしに選択肢は無い‥
もう、今更どうにもならない‥
そんなことを考えて、押し潰されそうになった。