好きになった人はホモ。
そういえば、
『実乃梨』
と名前を呼ばれるようになったのも、ごく最近だなと思いながら。

私は、背中で次の言葉を待った。

振り返らなかった。
振り返ったら、追いかけてしまいそうだったから。

「・・・ありがとう」

遠くて、小さくて、でも確かに聞こえた、秋彦の声。

こんなに愛しい人なのに、自分から手放した。
嗾けた。

私達の共通点は、二人とも叶わない恋をしてる、ってトコ。

私は彼の秘密を知る、唯一の彼の理解者――。

でも真崎が秋彦を受け入れたら、この関係も終わり、私の恋も完全に希望を失くすのか――・・・。

つぅーと頬を流れる雫。

これは悲しい涙?
それとも、好きな人が一歩前に踏み出してくれた喜びの涙?

多分どっちも正解で、ただ一つ言える事は、私は後悔していないという事――。
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