年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 風邪を引いても一人、寂しい夜も一人、惨め一人暮らしをしなくて済む方法……。それは他のパートナーを探すことだ。由也くんだって疲れた身でわざわざ寄り道しなくていい。私はそっぽを向いた。


「別れたくないよ」
「だって今、別れた方がいいって言ったじゃん!」
「僕だって別れたくない」
「私が風邪をひくたびにこうして見舞いに来るの大変じゃん。別れたほうがいいに決まってる」
「綾香さん!」


 由也くんは立ち上がり、私の横に来る。私の肩に手を置き、私を正面に向かせようとする。でも私は絶対に振り向くまいと意地を張る。


「面倒なんて思ってないよ」
「……」
「ただ……僕より綾香さんを幸せに出来る方がいるなら、僕は身を引こうと思ったから。それだけです」


 そっぽを向いてた私の背後から由也くんはふんわりと抱きしめた。背中に当たる由也くんの体、暖かくて優しくて。


「……ごめん、由也くん、うぇうぇーんっ」


 私はビービーと泣いた。由也くんはそのまま抱きしめてくれた。しばらくして私が落ち着くと携帯を取り出し、自宅に電話したようだった。接待で飲みつぶれた社員を介抱するのにそのまま泊まる、そう嘘をついていた。相手は多分母親。

 由也くんが親にまで嘘をついた。私は由也くんの母親には悪いと思ったけど、ちょっぴり嬉しかった。





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