年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 自分でも不思議だった。時計に刻印できなくても泣かなかった自分。ため息ひとつついただけで流せたというか。慣れてきたのかもしれない、由也くんとのへんてこな関係。将来を誓い合おうという恋人なのに結婚も同棲できない。辛い物を食べていると辛さに慣れて辛さを感じなくなる。それと同じように恋人には当り前のことが私たちには当たり前でないことに普通になってしまったんだろうと思った。麻痺。


「慣れてしまえば何でもないことなのかもしれない」


 世の中何かにつけ、欲しいものを手に入れるときは何かを諦める。大好きな彼氏と結婚するなら一人暮らしの自由さを手放すことになる。新しい車を購入するなら今まで乗りなれてきた愛着のある車を手放すことになる。それと同じなんだ。ただ私の場合は、由也くんといることを選択するために、我慢することが他人より多いというだけで……。

 時計は海外ブランドのものにした。ちょっと高価だったけど、副社長という由也くんが見た目で卑下されないようにいいものにした。正規の輸入販売店に出向いて注文して、後日私が支払うことにした。勿論由也くんが出すって言ってくれたけど、ドレスのお礼に私が出させて欲しいとお願いした。結婚資金に貯めてたお金もあったし、私から由也くんに何か記念になるものをあげたかった。

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