年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
「ここは僕の大切な場所。御曹司でも何でもない天体好きのただの人でいられるから」
「あ……」


 思い出した、御曹司だとカミングアウトされたとき、しがらみから抜け出したいと言ってのを。普通に普通の生活をしたかったって。


「だからここには将来奥さんになる人も子供も連れて来ないよ」
「う、うん……」
「僕と綾香さんだけの場所」
「うん」
「“奥さん”って紹介したほうが良かった?」
「お……??、ひぃっ!」


 奥さんって響きに反応した。恥ずかしいし照れる……。由也くんはニコニコ笑う。オーナーが宿泊申込者を持って来て由也くんはそれに書き込む。藤池由也、長谷川綾香と名前や住所を書いていく。オーナーは、直に“藤池”綾香さんになるんですな、ほほう!、と私をからかう。そうだ、ここは秘密基地、由也くんと普通の恋人でいられる場所だ。



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