年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 そんな風に毎日が過ぎた。由也くんは連日来たり、10日も顔を見せないときもあった。でも毎朝毎晩メールはまめにくれたし、日中外出先から電話をくれたりもした。近くに用事があったからとアパートのドアノブに焼菓子の袋を引っ掛けておいてくれたり、なんだかんだと近くにいたように思う。それでも由也くんが来た夜、見送るときには寂しくてスーツを握ってしまう。

 偽の結婚生活も3年が過ぎ、私は花の大台を突破した。32歳。由也くんは公言した通り、ゴールデンウイークと年末年始には旅行に連れていってくれた。あのペンションだったり、全く別の温泉旅館だったり、イルミネーションで有名なスポット近くのホテルだったり、様々だった。私は何処でも良かった。嬉しかった。由也くんと長い時間一緒にいれて、同じ朝を迎えて、同じものを見て、同じ部屋に帰る。当たり前のことがすごく幸せだった。


「あ……まただ。ふう」


 ある日アパートに帰ると大きな封筒が郵便受けに入っていた。実家からの郵便物、お見合い写真。30を過ぎてからというもの、実家から遠慮気遣いなく送られてくるようになった。時を合わせたように携帯が鳴る、画面を見れば実家の電話番号。出るのも億劫で留守電にする。携帯からまくし立てる母の声が聞こえる。そんな調子で私は実家からも足が遠退いていた。もう1年も帰っていない。別に気にせず堂々と帰ればいいのかもしれない。でもかえって実家の両親をがっかりさせそうで嫌だった。

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