年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
「う、産めません!」
「そうですか……。今回は諦める、ということですか」
「はい……」


 そのあと医師は中絶手術の説明をした。麻酔を掛けたあと胎児を掻き出す、手術が原因で感染症にかかると不妊になるケースも稀にあること、念のため1泊入院になること、などを挙げた。そして最後に用紙をペラリと差し出した。


「同意書?」
「ええ。パートナーの方の署名捺印が必要です」
「はい……」


 私はそれを受け取り診察室を出た。別室で手術日の予約や支払い方法、入院に際して必要なものを説明された。今日の会計が終わるころには昼前になっていた。由也くんとデートの約束をしている、時計のベルトを見に行くのに。

 外に出ると日差しは暑いくらいだった。綿菓子のような入道雲、青い空。トボトボと来た道を帰り、由也くんが迎えに来るのを待っていた。


< 258 / 600 >

この作品をシェア

pagetop