年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
「奥様、ご無沙汰してますう~」


 彩乃は首をやや傾け、上目遣いに頭を下げた。ああ出た、彩乃の営業スマイル。よくもまあヌケヌケと挨拶出来るもんだと感心した。


「あ、ご無沙汰してます、長谷川です。一度だけ代わりに試供品をお届けしたことがありましたが」


 私も挨拶した。奥さんは覚えていてくれたのかニッコリと笑った。窓側の席に通され、彩乃と向かい合わせに席に着く。


「先輩、見ますう?」


 彩乃は私の返事を聞く前に鞄から小箱を出した。パカリと蓋を開けて中から指輪をつまみ上げた。どおですう?、と言いながら左の薬指にそれを嵌めた。

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