年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
「エンゲージリング?」
「1カラットは無いですけどお、大きいでしょ」
「……」
彩乃は左手をテーブルの上に出し、日が当たるようにした。ヒラヒラさせてわざと反射させる。キラキラと白く、時々虹色に輝く石は息を飲むほど綺麗だった。
「……」
惨めだ。あまりにも惨めだ。一生もらうことのないダイヤモンドの指輪。欲しけりゃ自分で買えばいい、こんな立て爪のいかにも婚約指輪じゃなくたってデザインリングを選べば休日なら身につけられる。でもそういう物じゃない、最愛の人から贈られて堂々とつけられるからこその輝きなんだ。
奥さんがお冷やとメニューを持って来る。彩乃の指に目が止まる。彩乃は結婚するので退職する、今までありがとうございました、と挨拶した。