年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 ゴールデンウイーク、由也くんの車で高原のお寺に向かう。お経を読み上げるご住職の後ろで手を合わせる。そのあとは外にある水子の石碑に供え物を上げ、お線香に火を点した。来る度に取り返しのつかないことをしたと赤ちゃんに詫びる。でも私の心の中には小さな変化もあった。ここに来れば赤ちゃんに会える気がしてならなかった。他言は出来ないけど、見えない赤ちゃんに寄り添えるという感情もあった。

 ペンションに行くと相変わらずのオーナーが明るく出迎える。今日も黒装束かそういや法事だって去年も言ってたか、と言いながら食堂に案内した。テーブルに差し出された宿泊申込書に由也くんが二人の名を書く、勿論別姓で。


「そうだ、藤池クン」
「はい」
「新しい望遠鏡を買ったんだが、上手く調整が着かなくてな。見てもらえんか?」


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