年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)

 タクシーから出て来たのは父親。こんなに遅くまで働くのを目の当たりにして大人は大変だと思った。由也くんは気にも留めずそのまま望遠鏡を覗いていた。ところが、玄関を荒々しく開ける音、階段をドカドカと駆け登る音が聞こえた。


『由也っ?!』


 父親だった。怒鳴り声にまた怒られるのかとビクビクした。暗い部屋から父親の足音が聞こえてきた、段々とベランダに近づく。そしてベランダを覗いた父親は由也くんを見つけるなり、大きく息を吐いた。


『なんだ、星を見ていたのか』
『父さん?』
『いや、てっきり……』


 帰宅した父親はタクシーから降りてふと2階を見た。由也くんの部屋のサッシが空いていてカーテンが揺らめいている。もしかして泥棒か、息子は無事か、事件に巻き込まれたかと父親は一気に顔が青ざめた。でも来てみれば息子は望遠鏡とベランダにいた。
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