年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 週明け、出勤して給湯室に向かう。鎌谷は先に来ていてやかんで湯を沸かしていた。


「カカカ、カマ」


 つい噛んでしまった、彩乃があんなことを言うからだ。


「おはよう長谷川、遅いぞ。エントランスでチョップしはぐっただろ」
「あ、うん……」


 湯気を吹くやかんを持つ鎌谷の後ろ姿。異様に広く見えた。肩幅のある背中。


「カカカ、カマ。大きくなった?」
「朝から下ネタ振るんじゃねえ、ボケ」
「うん、ごめん……」


 いつもなら鎌谷の隣に並び、マグを受け取る。でも近付くのが怖くて壁伝いに横歩きする。鎌谷が私を好きなんて絶対に有り得ない……。そうは思うけど意識してしまった以上、普通には出来ない。いつまでもマグを取りに行かない私にいらついたのか鎌谷は振り返る。
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