年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)

 紺色の地味なスーツ、羽織るコートもベージュで地味で、布地は良さそうだけど社長夫人っていう感じではなかった。もっときらびやかな人物像を描いていたのは、私が庶民で勝手な妄想をしてるからだろうか。そんなことを考えて歩道を歩く。


「あの……由也くんは大丈夫ですか?」
「ええ、まあ」
「目は……」
「見えてるようなので大丈夫だとは思いますが眼科に行くようには言いました」
「そうですか……」



 それを聞いて少しホッとした。



「……」
「……」


 何を話せばいいのだろう、顧客なら正月休みは何処かへ出掛けたか、とか、福袋は何処のが良かったらしい、とか適当な話題で済ますけど由也くんの母親にそれは当てはまらない。母親は何も喋らない。ただ無言で怒ってるのか、もともと無表情なのかも分からない。
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