あなたから、kiss
「伝わんないかなあ、俺の気持ち。」
「………………。……?」
雨宮くんが…ようやくこっちを見た瞬間に。
オフィスの電話が……けたたましく鳴り響いた。
「……えっ……!契約放棄…?」
堰を切ったかのように……次々と、次々と…。
ひっきりなしに、掛かってくる。
「はあ?今からですか、……分かりました、早急に伺います。」
雨宮くんが居なくなる……15分前。
オフィスは一気に……戦場へと化す。
「佐竹!グルメのページ、ライターがトンズラこいだ。急遽代理立てるように手配しろ!」
「……はい!」
「鈴木は、M社に三校取りに急げ!」
「今すぐ!」
「高山は……、居ないか。野宮先生がカラー仕上げたから行かせねーと。」
一体…何が起きてるのか。
編集長がいきり立って、叫び続ける。
「今夜は…徹夜か……。」
「あの……、編集長!私に出来ることは…」
「花。お前は……、雨宮の送別会に行ってやれ。」
「………え。」
「悪いが俺らはそんな暇ないようだ。」
「なら……!」
「可愛い教え子の旅立ちだぞ?コレは…、デスク命令だ。」
社員の皆が……、
うんうんと頷きながら、こっちを見ている。
これは………?
戸惑うこと、数秒……
「編集長…、最後まで……お世話になりました!!」
雨宮くんが、深々とアタマを下げて…
社員一人一人の顔を、ゆっくりと…眺めた。
労を労う言葉と、拍手が…沸き起こって。
私の手を…、ギュッと掴みとる。
「雨宮く……」
「先輩!……行ってらっしゃーい!」
オフィスの入り口でそう言って笑うタカちゃんの脇をすり抜けて……
何が起こったのか分からぬまま、
私は……走っていた。