あなたから、kiss




握られた手が……熱かった。




人混みが…私達を避けて。





カツカツと、音を立てるヒールが…もどかしくもあった。







とにかく、ついて行くのに…必死で。





背中を向けて走る…雨宮くんが、いなくならないようにと……無我夢中で…。










やっと走るのをやめた時には、雨宮くんと二人、肩を上下させて……


春の匂いを、これでもかっていうくらいに…吸い込んだ。













「………速いですね、やっぱ。」


「……………。」


「ついて来てくれなかったら、どうしようかと思いました。」


「だって、あの状況では……。」



雨宮くんは、はあーっと大きく息をついて。




ようやく…手を離した。



「どこまでも…仕事第一なんだから…。」


「……え。」


「こっちだって…焦ります。」



「……………。」








月明かりが…


とても綺麗な夜だった。



「でも、それが…花さんです。変わって欲しくは…ないです。」



彼は…静かに、静かに。


今宵、私を…引き上げていく。





「ずっと、そのままで…居てください。」


「……え?」


「真っ直ぐで、強がりで、綺麗で……。揺らがない花さんで。」



「……………。」


「多分、俺も…変わらないですから。ずっと花さんが憧れで…、好きな人だってことは。」



「……そんなの…、まだわかんないじゃない。」



これから、社会に出て……


雨宮くんを好きになる人はきっとたくさんいる。



信念を持っていて、嘘は付かない…真っ直ぐな人。


好きにならない理由がない。



「でも、俺が知っている花さんを。他の人には…知られたくない。それって…我が儘ですか?」



「………どう…だろう。」



「少なくても、花さんも…そうなんじゃないですか?」




「……え…?」



「多分…、花さんは俺んとこ好きですよ。」



「…………?!」



「そうじゃなかったら…、あんなキス、避けれたハズです。」


「……ど……、どうだろう?」







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