あなたから、kiss

昨年までの私は、ファッション雑誌の担当をしていて…。


若い女子社員と共に、あーでもない、こうでもないと…。上手くやってるつもりだった。


モニター調査を重ね、自らも購入してきたもコスメの数々…。


若くてキレイなタカちゃんは、格好の餌食で。

何度も彼女を実験台にしてきた。




「あのですねー、普段からモテる私で試したって意味ないでしょう?」



ある日タカちゃんはそういって。


有無を言わせず…、私を椅子に拘束させた。




12ページの特集、『モテコスメ』の口コミランキングと、新商品の紹介ページ。




各社の注目商品をデスクの上に並べて、その中の…ほのかに紅茶の香りのするグロスをたっぷりと塗られた。




「ヨシ、これで周りの男の反応が変われば…実証されますヨ♪」



「……んなバカな…。」




「元香…、綺麗だよ。」

「タカちゃん 、ふざけないでよ…。」





キャッキャとじゃれ合って。


くるりと…椅子を回転させると。



一人の社員……、いや、


バイトくんと。



目が…合った。






「「…………。」」




「………。『花』って、名字だったんスね。」



そこかよって言うみたいに…、タカちゃんと二人、ガクリと肩を落とす。




「ずっと名前かと思ってました。」



「ああ、そう……。」



そりゃあ、こんな若くてモテそうな男に。


おばちゃんの変化など…興味あるハズもない。




「ピッタリな名前だなって。」



「……は?」


「綺麗ですもん、花さん。グロス…、似合ってます。」




彼はそれだけ言うと、「バイク便、出して来ます。」と…、颯爽とその場を立ち去って行った。





そんな、彼の言葉に…



ノックアウトされたのは、タカちゃんの方だった。



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