それでも僕は君を離さない
「シャワーをありがとう。」

奈々はそう言って

俺が差し出したアイスティーを笑顔で受け取った。

「冷えてて美味しい。」

「がぶ飲みしたカクテルより?」

「もう充分堪能したから飲みません。」

「賢明だな。」

俺は彼女を胸に抱き寄せた。

だが何かおかしい。

しっくりしない感じだった。

「奈々?」

「はい。」

「坂下に何か言われただろ?」

「どうしてわかるんですか?」

「勘でわかる。それと空気で。」

「空気で?」

「そう。俺には何も隠せない。」

「そうですね。」

「何を言われたんだ?」

「複雑なのでうまく言えません。」

「時間はある。じっくり聞こうか?」

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