それでも僕は君を離さない
「欲求のない人もいると思います。」

「異議あり。」左の笹尾先輩が即座に言った。

「それに賛成だ。」右の透吾さんが彼に賛同した。

「有り得ない。」

「ナンセンスだ。」

「そもそも人間は欲求の中から生まれたようなものだ。」

「欲求のない人がこの世にいるとは思えない。」

「人間は欲求があるから進化してこれたと思う。」と透吾さんが静かに言った。

「確かにそうだ。人間は欲求を満たすために学習してきた。」と笹尾先輩が続けた。

私はこの二人と張り合う気になれなかった。

私が欲求のない数少ない人間の一人かもしれないのに

私の意見は全員に反対された。

「それなら人間の未来はその人の欲求によって左右されるのでしょうか?」

私はふと疑問に感じてそう言った。

「欲求が複数なら進む道も複雑になると思う。」誰かが言った。

「誰もが望む道を歩いていきたいと思うのは当然だ。」

「欲求が多い人ほど悩みも多いと思う。」

あっという間に2時間が過ぎた。

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