それでも僕は君を離さない
やはりいるようだ。

俺はデスクにもたれかかって待った。

「すみません。奥にいたので気づかなくて。」

奈々はそう言いながら小走りに戻ってきた。

「先輩。」と小声で言った彼女は多少なりとも驚いたようだ。

「ここで先輩はおかしいだろ。」

「そうですね。」

「主任に頼まれた急ぎのものだ。」

リストを手渡した。

「承知しました。」

俺はすばやく用意をする彼女を見ていた。

「お待たせしました。全てそろっています。」

「ありがとう。」

「いいえ。」

「なぜラボを志望しなかったんだ?」

「私は今の部門が気に入っているんです。」

「一人で無理するなよ。」

奈々は俺をじっと見た。

数秒経った。

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