Secret Rose
マトリカリア
普段自分の部屋で寝ているときは、カーテンを開けているので、遅くても9時には目覚めるのだけれど、昨夜に限り、母の寝室で眠ったのでカーテンは開いていなかった。
だから、いつ日が昇り、夜が明けたのかわからず、ふわふわのベッドの中でお寝坊さんだった。

爆睡していたわけではない。物音がしているのが聞こえた気がしたが、絵里奈が泊まっていたので、きっと絵里奈が先に起きたのだろう と、気に留めなかった。


気に留め、私も一緒に起きればよかった。
そうすれば、絵里奈の悲鳴も、聞くことはなかったのに・・・。


だが、絵里奈は何度も泊まりに来たことがあったし、絵里奈がうちを自由に使うのは普通になっていた。
母が居るときもそうだったので、尚更気に留めるまでもないと思っていたのだが・・・。


さっきの“物音”の正体は、たぶん母が帰ってきた音だったのだろうか?
玄関の扉が開く音がして、パタパタとスリッパの音が聞こえた。
ガサガサとお土産の紙袋の音も聞こえた気がする。
足音からすると、母は玄関からまっすぐキッチンへ向かったようだった。
コーヒーサイフォン独特の、機械音と水音が混じった音が聞こえた。

しかし、大きく“バン!”という、扉が勢いよく開く音がした。
見ていたわけではないが、トイレや風呂場の音でないのは確かだった。
他の扉というと、母か私の部屋だけだ。今、私が居る部屋の扉は閉まったまま。
ということは、昨日絵里奈が泊まった私の部屋しかない。

何があったんだろう? と思う間もなく、絵里奈の悲鳴が家中、もしかすると庭にまで響き渡ったかもしれない。

私はびっくりして飛び起き、一目散に扉の開いている部屋に駆けた。
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