歪んだ愛しさ故に
「おはようございます」
「おは………え?誰?」
いつも通り出社して、先にいる人たちに挨拶をしていく。
誰もがあたしを二度見する。
注目されるなんて、どれくらいぶりだろう。
人の視線って、こんなにも感じるものなんだ。
「ふぅ……」
いつもの席について、パソコンを開いた。
その途端、周りがざわつく。
「えっ……!?
と、豊田さんっ!?」
一人の社員が、大声で人の名前を呼ぶ。
フロアにいるすべての人が、あたしに注目した。
「おはようございます」
にっこりと微笑み、愛想を振りまく。
レンズという、隔たりがない視界。
さらりと流れる髪。
これがあたし。
豊田琴音だ。