歪んだ愛しさ故に
 
「ふーん?」


あたしの返答に、ほんの少しだけ口角を上げてニヤつく上沢さん。

何か胸の奥がざわついて、
嫌な予感が脳裏をよぎった。



「じゃあ、こっちのスタイルが社内でバレたら結構嫌な感じ?」

「は?」

「会社で知ってんのは俺だけ?」

「……はい…」

「ラッキー」


今度はニッと笑って、あたしの髪を手に取った。



「俺、豊田さんのこと気に入っちゃった」

「はい!?」

「社内でとか、下手に問題は起こすつもりなかったんだけどなー」

「……」



目の前にいるこの人は、
本当にあたしが知っている上沢拓なのだろうか……。


あたしが知っている上沢さんは

優しくて
賢くて
知的で……


真面目な人。
 
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