歪んだ愛しさ故に
 
「なあ、その状態でさっきみたいな顔してよ」
「さっきの?」
「ずいぶんと、俺を挑発してくれたじゃん」
「……」


一瞬、本当に何のことを言っているのか分からなかった。

だけど思い出した。
会議室での出来事。

過去の自分が蘇りそうになった瞬間。


「意味が分からないんですけど」


ふいと目を逸らし、窓へと顔を向けた。


キラキラと光るネオン。
忙しなく歩く人並み。

全てがどうでもいいように映っていく。



「……なんでそんなにあたしに構うんですか」



顔をそむけたまま、
苛立ちを含めて彼に問う。

こんなあたしに構ったって、彼にはなんのメリットもないはずだ。


上沢さんはくすりと微笑むと、




「俺、昔から自分に屈しない女が好きなの」




と最悪な言葉を漏らした。
 
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