お姫様と若頭様。【完】


私が紅蓮を離れて、
もう1ヶ月が経とうとしていた。


あれから何もなくただただ平和に、いや
味気なさを感じらながら生活している。



皆私のこと覚えてるかなぁとか、
きっと恨んでるだろうなぁとか、



…ヨルはどうしてるかなぁとか。





本当に皆が恋しくて仕方のない
1ヶ月だった。


皆の声が聞こえない生活が、
どうもまだ体に馴染まない。

声が聞きたいって思っても、
黒蓮は怖いくらいに静かで…。

それが余計に寂しさを倍増させた。



"きっとこのまま黒蓮は飽きてくれる"


ずっとそう信じて生活していた。






なのに黒蓮は解放してくれなかった。







総長は手を出すどころか全く干渉してこないし、その他の人も同じだ。


必要以上話しかけて来ないし、
私は存在してないようなのだ。




「あの…黒蓮の総長さん??」


恐る恐る声を掛ける。




「…だから、銀でいいって言ってる」



呆れたように言う黒蓮総長。



呼び方なんて別にどうでも良いのに…。




「…なんで私に何もしてこないの?

……乱暴したり、しないの?」







「そういうの嫌だろ?



……無理矢理ヤろうとか思わない」




意外と良い人…??


まぁ私を無理矢理姫にしたけど。




「…腕の傷……」


「ん?腕…?」


総長が指差したところを見ると
対して変哲もない。




「…私の腕が、どうかしたの?」





すると私をじっと見つめる彼。



吸い込まれてしまいそうなほど、
暗すぎる黒。


「…前ここに来た時傷あったろ。



……抵抗の痕かと思って」





…そっか、
それに気づいてたんだ、彼は。


私が前ここに連れて来られた時、
あの人が来た次の日だった。


あの日もあの人に身体を許せぬまま
必死に抵抗した。

それを彼は見抜いてたのか…。







「ありがとう……私あれトラウマなの」




少しだけ、"私"を教えてあげる。




「家のこととかでやっぱり……
そういうこともしなくちゃいけなくて。


わかってはいるけど、私には彼がいて…

あなたには悪いけど、
私本当に彼が好きなの。


彼以外の人とはそうなりたくない。


抵抗してどんなに傷つけられようとも
私は自分から身体を許したりしない。

これ以上、
彼に釣り合わない私になりたくない。


彼は凄く素敵な人で、私とは不似合い。



これ以上汚れたら、
彼とはいれなくなっちゃう。


…とは言っても、
もう会えないんだけどね」



そう言って笑うと
彼はとても複雑そうな顔をした。


私に好意を抱いてくれて、嬉しい。



…でも私は、
それに応えることは出来ない。























「お前を今返すことは出来ない」










「うん」






ちゃんとわかってる。


そんな聞き分けが悪い子になるつもりは
毛頭ない。



「別に良いんだ、ありがとう」























「今は、って言ってるんだ」





「えっ…?」








「…刃牙、零波、達充-Tatsumi-
お前ら少し席を外せ」


「おい、銀!」

怒鳴る刃牙。


「総長の命令だ。刃牙、達充…行くぞ」

いつも冷静で総長絶対な零波。


達充は私を攫った人。







皆が出て2人になると話し出した彼。




「俺が前お前に言ったの覚えてるか?


"紅蓮の姫じゃなくお前が気に入った"
ってやつ」


「え…う、うん」


どうしたんだろう、急に。



「あいつらには一応言ってある。


"お前をここに連れて来た本当の理由"」





「本当の…理由?」


私を気に入ったからじゃなくて?


「お前を気に入ったのは勿論だが
…その後の話だ。














お前はある族…
終世-Tsuise-から狙われてる」


「終世…」


「俺がそれを知ったのは約2ヶ月前。


あいつら以外にもお前が紅蓮の姫だということはこの世界には知れ渡っていた。


姫を狙って地位を奪おうと狙ってる奴らも少なくなかった。

その中の1つが終世だ。


あいつらはかなり卑怯な奴らだ。

武器なんて当たり前。
薬や銃、強姦で裏と繋がってる。


そんなのに捕まったらお前は…対抗する
紅蓮も終わりだ。生きて帰れない」


そんなの…ダメ…絶対ダメ。



「お前に隠してたことがある。
























…俺らは黒蓮じゃない」


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