お姫様と若頭様。【完】



いつからだろうか?




彼女を"ただの"仲間と
思えなくなったのは。




彼女とヨルが2人でいる姿を、
素直に見ることが出来なくなったのは。






ずっとずっと2人は仲間で、
尊敬する人だった。



彼女は当時喧嘩が強かったわけではないけど尊敬できる存在で。


あの凛々しく強い瞳に紅蓮は皆
強く惹かれた。


優しく綺麗な彼女。


俺らの光で希望で憧れで、
この世の美しいものなんて全て霞んでしまうほど繊細な美しさ。



俺らには、俺には、
必要不可欠な存在だった。





いつの間にか、
倉庫に来る彼女を目で追っていた。


いつもいつも、誰よりも美しく、
強さの中に儚さを含んだ彼女。


それは彼女を守ってあげたいと
強く感じさせるものだった。






どうして彼女なのだろうか?




どうして彼女でなくては
ならなかったのか?






ずっとずっと疑問だった。


どんなに彼女を想っても届かない手は、
俺をただ虚しくさせるだけなのに。



それでも、やっぱりそれは彼女の笑顔を
見れば理由なんてこんなものかと
毎回思わせられた。




"彼女の笑顔を、美しさを守りたいから"





俺にしては少しキザな言葉だけど、
これ以上に相応しい言葉なんてない。



傷つく彼女を見るのは、
自分が傷つく以上に傷つく。


なんで、なんでと自分を責めるのは
もう何度目かもわからない。




彼女を見るのは凄く勇気がいる。



こんなにも傷を負った彼女を見て、
俺が正気ではいられなくなる気が
するから。


誰かれ構わず、
傷つけてしまいそうだから。


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