お姫様と若頭様。【完】


彼女とヨルのイチャラブ生活はヨルが彼女の家に迎えに行くところから始まる。

ヨルが、とは言っても総長につく俺や運転手も護衛の為に来ているのだが。




「…おはよ」


そう笑顔で言う彼女だが今日は酷く寝不足のようだ。

彼女は今日みたいに目の下に隈を作ってくることがある。


そしてそんな彼女の身体には決まって傷があった。


単なる擦り傷などではない意図的に付けられたような痕

苦痛に歪む彼女の表情

そんな彼女を見るヨルもまた悲しそうな悔しそうな苦しそうな表情で。


お互いの心だけでなく身体も通じているのではないかと言うほど深く通じる部分が多かった。





「…ユズ」



だけどあいつだって秘密にしたいことくらいあると、聞いてはいけないこともあると誰より知っていて。





「…ふふっ、どうしたのヨル?」



だから少しでも安心を与えようと、笑顔になってもらおうと、彼女を黙ってそっと抱きしめるのだろう。

困ったようにどうしたのか聞く彼女だがどう見てもどうかしたのは彼女の方だ。

自分より他人優先な彼女に、ヨルの彼女を心配する異常なほどの気持ちは仕方ないのかもと思えてくる。


無理したような笑顔もいつも一緒にいる俺らならわかってしまう。


わかってしまうとわかっていてそれでも彼女は俺たちの為に微笑むのだろうか?


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